自社株の評価は、中小企業の経営者にとって非常に重要なテーマです。特に、相続税対策や事業承継計画の一環として、自社株の評価額を下げる方法を検討するケースが多くあります。その中で、不動産の購入は、自社株評価の引き下げに有効な手段の一つとされています。本記事では、不動産購入による自社株評価の引き下げ方法と、それに伴う問題点について解説します。
不動産購入で自社株評価を下げる方法
自社株の評価は、一般的に「純資産価額方式」と「類似業種比準方式」のいずれか、またはその組み合わせで行われます。このうち、純資産価額方式を用いる場合、自社が保有する資産と負債が評価額に大きく影響します。
不動産購入が影響を与えるポイント
現金の減少
不動産を購入することで、会社の現預金が減少します。現金はそのまま評価されるため、現金を減らすことで純資産額を引き下げることができます。
不動産の評価差
購入した不動産は、通常、固定資産台帳に簿価で記載されます。しかし、実際の市場価値は簿価よりも高い場合が多く、この「評価差」が株式評価を引き下げる要因となります。
借入金の活用
不動産購入にあたって借入金を利用する場合、負債が増加するため純資産額をさらに抑える効果があります。
不動産購入を活用するメリット
評価額の抑制効果
上記の通り、現預金の減少や負債の増加により、純資産価額方式で計算した自社株の評価額を引き下げることが可能です。
資産の活用
不動産を運用することで、賃料収入などの追加収益を期待できます。
事業承継対策の柔軟性
評価額を抑えることで、後継者への株式移転時の税負担が軽減されます。
不動産購入に伴う問題点
一方で、不動産購入には以下のようなリスクや課題も存在します。
流動性の低下
現預金を減少させることで、資金繰りが厳しくなる可能性があります。不動産はすぐに換金できないため、突発的な資金需要に対応しにくくなるリスクがあります。
維持コストの増加
不動産には固定資産税や維持管理費がかかります。これらのコストが会社の利益を圧迫する可能性があります。
不動産市場の変動リスク
購入時点では評価額を引き下げられたとしても、不動産市場の下落により資産価値が大幅に減少するリスクがあります。
税務リスク
不動産購入による評価引き下げが、税務当局に否認される場合があります。特に、不動産の購入目的が明確でない場合、租税回避行為とみなされる可能性があります。
不動産購入の活用における注意点
購入目的を明確にする
事業の拡大や投資計画に基づいた不動産購入であることを明確にし、税務当局からの指摘を防ぎます。
資金計画を慎重に立てる
購入後のキャッシュフローや維持費を考慮し、無理のない計画を立てましょう。
専門家の意見を取り入れる
税理士や弁護士、不動産の専門家と連携し、法的リスクや税務リスクを最小限に抑えることが重要です。
まとめ
不動産購入は、自社株の評価を引き下げるための有効な手段となり得ますが、それに伴うリスクや課題を十分に理解することが必要です。特に、資金繰りや税務リスクへの対応が不十分な場合、会社全体の経営を圧迫する可能性があります。不動産購入を検討する際は、事業の実態に即した計画を立て、信頼できる専門家と連携することで、効果的な評価引き下げを実現しましょう。
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